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技術情報

【技術情報】キトサン/PVA混合溶液 導電率測定

研究員のつむぎです。
今回は、キトサンとPVAの混合溶液の導電率について調べてみました。

   

研究員:つむぎ
MECCのナノファイバー部門に所属して2年目の研究員。
趣味:科学雑誌や最新の研究論文を読むこと、空手
特技:中国語

    

【目的】
純粋なPVAは導電性が高いですが、キトサンを添加すると溶液の導電率は非常に低くなる。と論文に書いてあり、本当に導電率が下がるのか気になったため、導電率が本当に下がるのであれば他の自然由来の高分子(ゼラチン等)の紡糸に対してうまく紡糸するためのヒントにならないかどうか、という理由で実験してみました。

     

【材料】
キトサン 100
PVA① ゴーセノール EG-22P (三菱ケミカル)
PVA② クラレポバール217 (クラレ)

     

【溶液】

50wt%酢酸水溶液に3wt%になるようキトサンを添加。80℃で加熱撹拌。
PVA①は10wt%、②は12.5wt%になるよう蒸留水に溶解する。70℃で加熱撹拌。
キトサン溶液とPVAを1:1の割合で混合。

〈導電率測定〉
作製した溶液の導電率を測定しました。結果は以下の表に示します。

溶液の種類導電率(mS/cm)
PVA①37.9
PVA②604
キトサン/PVA①(1/1)1596
キトサン/PVA②(1/1)1764

PVA①、②ともに導電率がかなり高くなりました。おそらく溶液内の酢酸が関係していると考えられます。

    

酢酸と酢酸水溶液での導電率も比較してみました。

  

溶液の種類導電率(mS/cm)
酢酸0.05
酢酸/H2O(1/1)868

酢酸単体での導電率はかなり低かったです。水溶液にすると、酢酸が弱電解質のため導電率が高くなりました。

  

今回キトサン溶液は弊社で作製する際の溶液作成手順にて行ったため酢酸水溶液を溶媒に用いていたのですが、文献内では氷酢酸のみを使用していました。
次は酢酸のみでキトサン溶液を作製してみて、変化があるか確認したいと思います。


キトサン/PVA①でサンプル作製を試みましたが、導電率が高いため液滴が落ちてしまい 綺麗なサンプルを作ることができませんでした。

キトサン/PVA①サンプル

      

  

 

キトサンとPVAを混合して導電率が下がることを期待していたので、導電率がかなり上がってしまって残念です。次は下がることを願いたいです…!

   

     

参考文献:「キトサンとポリビニルアルコールからなる電界紡糸ナノファイバー膜の機能性および抗菌性の特性評価」https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211715624000109