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技術情報

エレクトロスピニングについて

エレクトロスピニング法は、多様な材料(主にポリマー) をナノファイバー形状へ紡糸できること、またファイバー形状のコントロールが比較的簡便であることが特長です。
これまでの研究から、工業用熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、 ポリマーブレンド、そして、無機化合物を混入した複合材のファイバーがエレクトロスピニング法によって紡糸されています(図1)。
ここ数年では、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸ジルコン酸鉛等のセラミックスナノファイバーの作製例が、盛んに報告されております。
通常、エレクトロスピニング法では、溶媒に材料を溶解した溶液を紡糸材料として用います。


図1 エレクトロスピニング法の原理

エレクトロスピニングの原理は、図1に示すように、高圧電源、ポリマー溶液・貯蔵タンク、紡糸口、および、アースされたコレクターからなります。
ポリマー溶液はタンクから紡糸口まで一定の速度で押し出されます。
紡糸口では、10~30kV の電圧が印加されており、電気引力がポリマー溶液の表面張力を越える時、ポリマー溶液のジェットがコレクターに向けて噴射されます。この時、ジェット中の溶媒は徐々に揮発し、コレクターに到達する際には、ジェットサイズがナノレベルまで減少します。


図2

紡糸したファイバーは、図2に示すような膜を形成します。
このときのファイバーの配向は、コレクターに依存します。
ナノファイバー膜は、単位体積あたりの総表面積が従来のマイクロサイズのファイバー膜を、はるかに凌駕することが知られており、この結果、ナノファイバーに化学的または物理的修飾を行うことで新奇的な特性を得られ、様々な分野に応用が期待されています。


極細ナノファイバー

多孔ナノファイバー

シングルナノファイバー

一方向配向ナノファイバー

図3

図3に示すように、同じポリマーを紡糸しても、パラメータの組み合わせをかえることで、平滑表面ファイバー、ビーズ状ファイバーや多孔表面ファイバーといった、異なる形状のファイバーを紡糸することが可能です。

一般的に、エレクトロスピニングに関連するパラメーターは、溶液特性、紡糸条件、紡糸環境条件といった3つのグループに大別することが出来ます(図4)。

溶液特性

・ポリマー濃度
・粘度
・導電性
・弾性
・表面張力

紡糸環境

・雰囲気温度
・雰囲気湿度
・大気圧

紡糸環境条件

・印加電圧
・溶液送出量
・噴出口、コレクタ間の距離
・コレクタによる巻取り速度

図4:ナノファイバーの形状に影響を及ぼすエレクトロスピニング法のパラメーター

これらのパラメーターを、どう組み合わせるかといった点がノウハウになってきます。
希望の形態のファイバーを紡糸するための最適紡糸条件を見つけだすことが、エレクトロスピニング法において一番難しい点であり、非常に長い時間を必要とします。
これまでは、どのパラメーターがどのようにファイバーの形態に影響するのかといったことを解明するために、多くの時間が費やされてきましたが、現在ではその傾向はある程度明確になっています。

例えば、ポリマーファイバー径をコントロールするには、当然の事ながら紡糸溶液のポリマー濃度が最も重要なパラメーターとなります。また、ファイバーの配向性をコントロールするには、コレクターの設計が重要になってきます。
一例として、ディスクコレクターにより作製した配向性サンプルを図5に示します。
このように、
ファイバー径、表面形状、配向性等、制御したい対象によって、コントロールすべき重要なパラメーターがあります。