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技術情報

ナノファイバーの近況

応用分野

医療

細胞足場、創傷治癒、創傷被膜、人工血管、DDS、骨再生、人工角膜、神経再生

食品

防腐剤

化粧品

スキンケア

エネルギー

池、セパレータ

環境

濾過フィルター、吸着材、センサー

機能性付加

医療

世界の再生医療市場規模は24.53%年に386億5,000万米ドルと推定され、2029年までに1,157億5,000万米ドルに達すると予測されており、予測期間(2024年から2029年)中に24.53%のCAGRで成長します。

Ashwini Wali氏らは生分解性を持ち生体適合性の高い材料のナノファイバーに銀ナノ粒子を包埋することで、抗菌創傷被覆材を作製しました。実際にラットを利用した実験では、高い創傷閉鎖性が確認されています。

 

図1.創傷被覆膜ナノファイバーの概要( Silver nanoparticles in electrospun ethyl hydroxy ethyl cellulose-PVA Nanofiber: Synthesis, characterization and wound dressing applications.より引用)

PCLは生体適合性が高く、医療用途でよく使用されています。Yue Hu氏らはこのPCLにケルセチンを組み込みナノファイバー膜を作製することで歯周組織再生を促進します。ラットでの実験では歯周骨再生の良好な結果が出ており、歯周病治療への応用が期待されています。

 

図2.歯周骨再生ナノファイバーの概要( A multifunctional quercetin/polycaprolactone electrospun fibrous membrane for periodontal bone regeneration. より引用)

上記以外にも医療分野でナノファイバーは応用されており、細胞足場、人工血管、DDSなどその活躍は様々です。

環境

ナノファイバーは濾過フィルターや吸着材などで環境分野でも応用されています。

環境汚染の課題に取り組むうえで、工業廃水から汚染物質を効果的に除去することはとても重要なことです。Hind M. Saleh氏らは幅広い産業で利用されている有機染料であるメチレンブルーの除去に着目しています。PCLにキトサンを配合してナノファイバー膜を作製したことでポリマー同士の相互作用が起こり、吸着能力が大幅に向上しました。生分解性ポリマーを使用しているため、環境にやさしくかつ効果的な吸着材としての活用が期待されます。

 

図3.ナノファイバーで作製された油吸着剤(エム・テックス株式会社HPより引用)

エネルギー

電池やセパレータなどエネルギー分野にも応用されています。Ping氏らはリチウム硫黄電池の課題点を改善するために導電性カーボンやバインダーを必要としない自立型電極の作製を行いました。エレクトロスピニングを介して作製されたナノファイバーは、溶液に混ぜられたナノ粒子が均一に埋め込まれた状態になり、電気導電性を向上させました。また、柔軟で曲げ状態でも優れた機械特性を持っており、フレキシブルなバッテリー用途に適した電極が作製されています。

 

図4.ナノファイバーを用いた自立型電極の概要( Efficient and Homogenous Precipitation of Sulfur Within a 3D Electrospun Heterocatalytic Rutile/Anatase TiO2-x Framework in Lithium–Sulfur Batteries.より引用)
ナノファイバーは上記以外にも様々な分野・用途で応用され多くの大学や企業でその研究がおこなわれているため、ナノファイバー事業のさらなる発展が見込まれます。

参考文献