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技術情報

【技術情報】キトサンとポリビニルアルコールを用いた電界紡糸ナノファイバー膜の機能性・抗菌性評価について

はじめまして。研究員のつむぎです。
今回は文献のご紹介です。

   

研究員:つむぎ
MECCのナノファイバー部門に所属して2年目の研究員。
趣味:科学雑誌や最新の研究論文を読むこと、空手
特技:中国語

    

【目的】
・医療分野への応用を目的とした、機能特性を向上させたナノ材料の開発。
・キトサンと他のポリマー、アジュバンド剤(PVA、CMC、ペクチン)を混合し、エレクトロスピニング技術を利用してナノファイバーを作製する。
・キトサン、PVA、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)の配合により、機械的及び構造的特性の上昇。

     

【メモ】
・カルボキシメチルセルロースとは
セルロースの誘導体であり、水溶性高分子で、水に溶けて粘度を出すことで機能を果たす。増粘剤や、乳化安定剤
食品用途、練り歯磨き・パップ剤などの医薬・化粧品用途、 衣料用の洗剤、捺染の糊剤、接着剤などの建築材料、土木工事のシールド工法の他、 養魚用飼料・ペットフードの粘結剤、リチウムイオン電池の製造工程でも使用されている。CMC工業会 (cmc-kogyokai.org)より

・ペクチンとは
ペクチンは様々な野菜や果物に含まれる天然の多糖類で、植物細胞をつなぎ合わせる役割があります。食品添加物として使用されるペクチンは主にりんごや柑橘類(レモン・ライム)から抽出されており、ゲル化剤や安定剤、増粘剤としてジャムやフルーツソース、酸性乳飲料などに使用されています。https://www.tatourui.com/about/type/05_pectin.htmlより

・キトサン
生体適合性、生分解性、抗菌活性に優れており、無毒で創傷再生プロセスを強化するが、キトサン単体での紡糸は大きな課題となっており、様々なポリマーや補助剤と混合して利用される。

・PVAは水溶性、生分解性、生体適合性、化学的安定性を持っている。

     

【実験手順】
〈エレクトロスピニング用ポリマー溶液の配合〉
キトサン-氷酢酸溶液
PVA-H2O溶液
CMC-H2O溶液
ペクチン-H2O溶液
をそれぞれ作製。このポリマー溶液から4つの混合溶液を作製した。

①PVA
②キトサン/PVA
③キトサン/PVA/ペクチン
④キトサン/PVA/CMC

エレクトロスピニング条件は電圧20kV、ノズルコレクタ間距離120mm、FeedRate0.02ml/h、針内径806.046μm

作製したナノファイバー膜は様々な方法から分析・評価された。

      

〈まとめ〉
PVA、ペクチン、CMCを混合したキトサン溶からでエレクトロスピニング技術を利用して、ナノファイバー膜を作製することができた。
アジュバント剤の添加により、皮膚表面からの滲出液を吸収するための膜に望ましい膨潤、水蒸気透過、生分解などの特性が改善された。アジュバント剤を添加することで、ナノファイバーは強靭で強く、柔軟性を持っていた。
ナノファイバー膜は、黄色ブドウ球菌に対して効果的な接触阻害を示した。
このナノファイバー膜は、皮膚病を治すための優れた材料である。

      

〈感想〉
・弊社でキトサンを紡糸するときはいつもPEOを使っているが、PVAを使って紡糸ができるか試してみたい。
・逆になんでPVAを使用したのか?PEOで同じ効果は期待できそうか?
・キトサンが黄色ブドウ球菌の働きを阻害する。キトサンが再生医療で利用されているのは知っていたけど、抗菌作用があることまで知らなかった。キトサンのアセチル化度が90%を超えていると抗菌効果が促進されるそう。潰瘍治療にも友好的。キトサン、有能すぎる。
・アジュバンド剤 (Pe、CMC) の添加でナノファイバーが強くなったし柔軟性も上がった。いろんな材料を組み合わせることで新しい特性を持つようになる。

PVAの導電率は高いけど、キトサンを添加することで導電率が下がるらしいんです!実際に実験してみたいです!

   

参考文献:「キトサンとポリビニルアルコールを用いた電界紡糸ナノファイバー膜の機能性・抗菌性評価」https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211715624000109