今回は、ポリビニルピロリドン媒介エレクトロスピニングZnO-ZnFe2O4複合ナノファイバーについて、ご紹介します!
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水からマラカイトグリーンを除去するためのポリビニルピロリドン媒介エレクトロスピニングZnO-ZnFe2O4複合ナノファイバー
Sradhanjali Raut* , Shraban Kumar Sahoo.(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666845924001065)
*School of Applied Sciences, Centurion University of Technology and Management, Odisha, India
合成染料による水資汚染は、その持続性と生態系や人の健康へ影響をあたえることから、重大な環境問題として浮上しています。合成染料の一つであるマラカイトグリーン(MG)は、繊維や皮革、医薬品など様々な分野で幅広く利用されていますが、水生環境では難分解性で、有毒であり、従来の水処理法に耐性があるため、MGを水から効率的に除去できる技術が必要とされています。吸着除去による処理法は、吸着材の使用により特定の物質を選択的に除去することができるため、有機化合物や一部の金属などの微量汚染物質の除去に非常に効果的です。
ナノファイバーは対比表面積の大きさ、高い空隙率、機能化の容易さにより、吸着材としての応用でも注目されています。なかでも、エレクトロスピニング法を利用して作製されたエレクトロスピニングナノファイバーは、高い比表面積と調整可能な特性を活用することで汚染物質の吸着効果を高め、除去を効率的に行うことができます。
酸化亜鉛(ZnO)と亜鉛フェライト(ZnFe2O4)は水処理に利用できる特性を持つ著名なナノ材料です。ZnOは光触媒活性があり有機汚染物質を分解することができ、亜鉛フェライトは磁性による吸着・分離プロセス通じて汚染物質の除去を促進します。この2つの材料を組み合わせることで、それぞれの特性を向上させ、水質浄化性能の高い材料が得られる可能性があります。 本研究ではエレクトロスピニング法を用いてZnO-ZnFe2O4複合ナノファイバーを作製し、水からMG染料を効果的に除去するための吸着材としての機能、特性評価を行いました。
〈材料〉
ポリビニルピロリドン(PVP)、無水酢酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトネート、マラカイトグリーン(MG)、PVPをエタノールに溶解し調整した溶液に酢酸亜鉛と鉄(III)アセチルアセトネートをZn:Feがそれぞれ1:2、1:1、2:1となるよう加え撹拌し、この溶液からエレクトロスピニング法を用いてナノファイバーを作製し、500℃で焼成してPVPを除去することでZnO-ZnFe2O4ナノファイバーを得ました。
作製したナノファイバーは、粉末X線回折装置(XRD)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて特性を評価しました。そして、一連のバッチ吸着実験を行い、吸着剤表面におけるMG染料の吸着挙動を調査し、UV-vis分光法を用いて処理液から非除去染料を算出しました。
<結果>
・特性評価
ZnOとZnFe2O4両方のピークの組み合わせが観察されたことから、ナノコンポジット中に両方の相が共存しており、亜鉛と鉄の比率によりピーク強度が変化しました。
Zn-Fe比がZn-Fe(1-1)、Zn–Fe (2–1)、Zn–Fe (1–2)の3種類のナノファイバーを比較したところ、Zn-Fe(1-1)のN2吸着量が多いことから表面積が大きいことを裏付けられました。
この結果を踏まえ、以下からはZn-Fe(1-1)ナノファイバーを使用して実験を行われました。
次に、解像度の異なるZn-Fe(1-1)に対するZnO-ZnFe2O4のFESEM画像を観察したところ、1次元連続ナノファイバーの形成が観察できました。FESEM-EDXからは亜鉛、酸素、鉄の元素ピークが確認されたことから、ZnOとZnFe2O4の存在が確認でき、不純物や表面汚染物質が検出される可能性があります。ナノファイバーの直径は40~60nmでした。
この結果から、二元酸化物であるZnO-ZnFe2O4ナノファイバーが作製できたことが確認されました。
(Sradhanjali Raut, Shraban Kumar Sahoo.: Polyvinylpyrrolidone mediated electrospun ZnO-ZnFe2O4 composite nanofibers for removing malachite green from water, Results in Surfaces and Interfaces , Issue 17,1st October 2024. より引用)
・MG吸着実験 ナノファイバー表面へのMG染料吸着実験をpH3~9で行い、観察したところ、pHが高いほど吸着力が高くなりました。(図3b)
(Sradhanjali Raut, Shraban Kumar Sahoo.: Polyvinylpyrrolidone mediated electrospun ZnO-ZnFe2O4 composite nanofibers for removing malachite green from water, Results in Surfaces and Interfaces , Issue 17,1st October 2024. より引用)
溶液のpHを変えてナノファイバーの表面電荷を測定したデータから、pHZPC(ゼロ点電荷)は6.4であることが分かりました。
pH<pHZPCの場合、材料表面はプラスに帯電し、pH>pHZPCの場合はマイナスに帯電するため、塩基性条件下では、マイナスに帯電した吸着剤表面と水溶液中でカチオン形態となったMGの間で静電引力が発生し、最大吸着効率が見られました。酸性条件下では、プラスに帯電した表面とカチオン形態となったMGとの間で静電反発が起こるため、吸着効率は低くなります。
MG染料吸着の時間及び速度論的研究により、ナノ材料上の利用可能な活性サイトのために、接触時間が長くなるにつれて吸着効率が最初に増加することが明らかになりました。この段階は急速であり、初期の吸着速度論が良好であることを示しています。60分後に平衡に近づくにつれて吸着が遅くなることから、拡散制御プロセスまたは利用可能な結合サイトの法話が示唆されます。擬一次速度論や擬二次速度論のような速度論モデルがこれらの挙動を解明されるために採用され、吸着メカニズムや最適な操作条件の理解に役立ちました。両モデルの非線形方程式は、様々な関連速度パラメータの計算に使用され、この表から、Zn-Fe(1-1)ナノファイバー表面へのMG吸着はPFO速度論に従うことが分かりました。
MG染料吸着の濃度実験(図3d)は、MGの初期濃度が高いほど飽和に達するまでの吸着容量が増大することを示しています。ラングミュアモデルなどの等温線研究は、平衡吸着挙動を分析します。ラングミュアモデルでは単層被覆と均一エネルギーを仮定し、有限個の同一サイトによる吸着を記述し、フロイントリッヒモデルでは、親和性が変化する不規則な表面での吸着を表し、多層皮膜を示します。ラングミュアは単層吸着に用いられ、フロイントリッヒはより複雑で不均一な表面に適用されます。
これらの等温モデルに関する様々なパラメータを計算するために、非線形方程式が使用され、表2に要約されています。
(Sradhanjali Raut, Shraban Kumar Sahoo.: Polyvinylpyrrolidone mediated electrospun ZnO-ZnFe2O4 composite nanofibers for removing malachite green from water, Results in Surfaces and Interfaces , Issue 17,1st October 2024. より引用)
再生の評価にはNaCl、NaOH、HClを用いられました。HClを用いると全体の93%の再生が得られました。再生後、材料を乾燥させ、pHバランスが取れるまで水で洗浄したところ、5サイクルの各過程において効率は80%まで維持されることが分かりました。
〈まとめ〉
エレクトロスピニング法を利用してZnO-ZnFe2O4複合ナノファイバーを作製されました。
Zn-Fe比が1-1のときナノファイバーの表面積が最も大きくなりました。さらに、吸着試験では、MGの吸着が溶液のpHに依存し、カチオン性染料と負に帯電したナノファイバー表面の静電相互作用により、高いpHで最大吸着容量を示しています。
速度論および唐音論的研究から、MGの吸着は擬一次的速度論およびラングミュア等温線モデルに従っていることが分かりました。再生試験では吸着剤が十分な科学的安定性を有し、吸着したMG種を除去して再利用できることを示しています。 以上の結果から、作製したZnO-ZnFe2O4ナノファイバーが、水からのMG染料除去に効果的な吸着剤となることが確認されました。
吸着においてナノファイバーの表面積の大きさは有効的ですね。
吸着では材料中の吸着剤比率や、水溶液中でのpH変化に伴うナノファイバー表面の形態変化によって吸着率が左右されるため最適な比率やpHを見つけることがとても重要なことがよくわかりました! 水質汚染などの環境問題に対して、ナノファイバーによる吸着材やろ過システムなどの応用がさらに広がることを期待しています☻