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技術情報

ナノファイバーの応用

現在ナノファイバーの応用が考えられているのは以下の分野であり、多くの大学および研究機関、企業において研究成果が報告されております。

ヘルスケア

再生医療工学、創傷材料、DDS

環境工学

浄水フィルター、防塵フィルター、マスク

機能性付加

機能性衣料、機能性食品

電子材料

電池材料、高導電性材料、透明導電フィルム

ヘルスケア

経済産業省の報告によると、再生医療製品の市場規模予測は2050 年には世界市場で15 兆円超、また日本国内では1.3 兆円と推計されております。再生医療の産業化で先行する米国ではFDA 承認を受けた再生医療製品の総売り上げは2012 年において約1,000 億円を記録しています。

応用例として東京電機大学で作製された人工血管を下図に挙げます。
東京電機大学、理工学部の船久保教授のグループは再生医療分野において人工血管や人工臓器の作製を研究されています。
その研究においてナノファイバーを使用することは3次元構造物を作製すること、細胞の足場材料とすることにおいて利点があると考えられています。
当グループはすでに下図のような人工血管を作製し、ラット腹部への埋め込み試験に移行しているとの報告がなされています。
再生医療分野以外にも創傷材料、防水材料、薬剤担持材料、剤形材料等として幅広い応用の可能性をナノファイバーは持っていると考えられます。

図1. 布製人工血管
図2. PTFE人工血管
 

環境工学

    

図3 ナノファイバーを使用したマスク(帝人株式会社HP より引用)

環境工学の分野において、すでにナノファイバーはフィルター用途やマスクといった商材で広く世の中に知られています。

ナノファイバーフィルターの高い捕集性能を利用して水処理フィルターとした場合、特定のターゲット分子を高い効率で除去することが可能となります。

その実用例としてセシウム除去用フィルター等が開発されている。セシウムの選択的化学捕集機構とメルトブロー不織布にナノファイバー不織布層を組み込むことで従来
のメルトブロー不織布のみでは捕集されなかった極小の粒子も捕集可能となると報告されています。(公開特許より引用)

機能性製品

    

図4 機能性粒子内包ナノファイバー不織布(公開特許より引用)

近年では単純なナノファイバー単体としてだけではなく繊維同士の複合材、あるいは粒子との複合材、機能性物質のコーティング材として使用することで様々な機能性を付加した繊維を紡糸出来ることが研究によって分かってきています。

一例として最近のトピックスを紹介します。イギリス・リンカーン大学とイランの食品科学技術研究所の共同チームは、学術専門誌『FoodHydrocolloids』に、食品に応用するのに適した“エレクトロスピニング法” の包括的な分析を掲載しています。

筆者のひとりであるリンカーン大学のNick Tucker 博士は、この論文で補助食品化合物の新しい製品や運搬システムに関するデザイン、パフォーマンスを前進
させると説明しています。
つまりエレクトロスピンニング法で作製されたナノファイバーは、加工から保管の間、あるいは体内の目的の場所に移す過程で、栄養素を保護するための
食品運搬システムに使われるだろうと期待されています。

電子材料

 

図5 導電性ナノファイバーを利用した
フレキシブルで割れない透明導電フィルム
(東京工業大学ホームページより引用)

図6 電池セパレータ(帝人株式会社HP より引用)

現在電子材料分野では高効率な太陽電池や燃料電池、蓄電池などに使用する電極やセパレータの材料やディスプレイやタッチパネル、機能性ガラスなどに使用する透明導電フィルターの開発が望まれています。

東京工業大学の松本准教授らのグループは透明導電フィルムの開発を進めており、電極やディスプレイに現在使用されているITO に代わる材料として期待が持たれています。

開発されている透明導電フィルムの特徴としては、ITO と同等の高い可視光透過率(80%) と高い導電性(45Ω/sq=表面抵抗率) を示しながら、さらに超薄型、軽量、フレキシブルで割れないフィルムであることが挙げられます。

【参考文献】