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【論文紹介】亜鉛枝晶を抑制する二重限界効果を備えたナノファイバーメンブレンの開発

2025年2月20日

環境に優しく、安全で低コストなエネルギー貯蔵技術として、水系亜鉛イオン電池(Aqueous Zinc-Ion Batteries, AZIBs)が近年注目を集めています。しかし、充放電を繰り返す過程で発生する亜鉛枝晶(Dendrite)や副反応は、電池の長寿命化や高効率化を妨げる大きな課題です。

🧪 最新の研究成果

北京化工大学の劉勇教授、吉林大学の王策教授、そして清華大学の胡平教授の研究チームは、科学誌 Advanced Functional Materials において、「Spatial and Electrostatic Dual-Confinement in Hierarchical Hollow Bi-Bi₂O₃@Carbon Nanofibers for Dendrite Suppression and Side Reaction Mitigation in Aqueous Zinc-Ion Batteries」という論文を発表しました。この研究では、静電紡糸法(Electrospinning) によって作製された新しいAZIBs用の陽極材料を報告しています。この材料は、Bi-Bi₂O₃を担持したカーボンナノファイバー(Bi-Bi₂O₃@CNF) の複合材料で、階層的な中空構造と表面の溝構造を備え、以下の性能を実現しました。

亜鉛枝晶の成長抑制
副反応の低減
電池の極化現象の緩和

図1. 静電紡糸によるBi-Bi₂O₃@CNF複合材料の製造プロセス

⚙️ Bi-Bi₂O₃@CNF複合材料の構造と特性

Bi-Bi₂O₃@CNFの特異な構造と材料特性により、「空間&静電の二重限界効果(Dual-Confinement Effect)」が発生します。この効果によって、亜鉛はナノファイバー表面に均一に沈着し、枝晶の形成を抑制します。また、純亜鉛陽極と比較して、オーム抵抗の低減水素発生反応の抑制、および極化現象の緩和が確認されました。

この結果、電池の**クーロン効率(Coulombic Efficiency)循環安定性(Cycle Stability)**が大幅に向上し、1000回の充放電後でも73%の容量を維持。さらに、1000 mA·g⁻¹ の高電流密度下でも高い容量保持率を示しました。

図2. Bi-Bi₂O₃@CNFおよびCNFの半電池における5 mA·cm⁻²および10 mA·cm⁻²の電流密度下での電気化学的性能

📊 電気化学性能の比較

比較実験では、Bi-Bi₂O₃@CNFと通常のCNF(カーボンナノファイバー)の性能が、5 mA·cm⁻² および 10 mA·cm⁻² の電流密度下で評価されました。結果として、Bi-Bi₂O₃@CNFの方が容量保持率と充放電効率において顕著な優位性を示しました。


💡 応用と今後の展望

本研究は、亜鉛枝晶によるAZIBsの性能低下を克服するための新たなアプローチを提示し、次世代の高性能かつ安全な電池材料の設計に向けた基盤を築きました。将来的には、電動車両や再生可能エネルギーの蓄電システムなど、さまざまな分野への応用が期待されます。


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※PDFダウンロードは有料です。


参考文献
Raut, S., & Sahoo, S. K. (2024). ZnO-ZnFe₂O₄ナノファイバーによるマラカイトグリーンの除去効果. Advanced Functional Materials, 2024, 25358. オンライン