ついに始動した『HELP』!
第一回目は、固まりやすい『ゼラチン』をうまく紡糸するための実験をしました。
今回の『HELP』実験参加メンバー:高・正垣・王
ゼラチンを使ってナノファイバーを紡糸するための溶液づくり
さっそく3人(高・正垣・王)は当社の電界紡糸装置NANONでゼラチンを紡糸するために溶液づくりを開始しました。
しかし・・・
30wt%ゼラチン水溶液は固まってしまう!!
ゼラチンってすぐ固まってしまう・・・。
どうにかして固まらないようにできないかなぁ?
メックには経験豊富な紡糸職人がいるじゃないか!!
ラボに聞きに行ってみよう!
新人メンバー3人はラボの中塚さんにHELPをお願いすることにしました。
中塚さーん!HELPお願いします!!
ゼラチンを紡糸したくて溶液をつくっていたんですが、固まってしまうんです。
ゼラチンは水だけだとかたまるので、何か混ぜればいいと思いますよ。
たとえば何を混ぜればいいですか?
紡糸がしやすいPEO、PVA・・・
あと、ゼラチンを水でなく酢酸で溶かす方法もありますよ♪
さすが中塚さん紡糸のためのノウハウがすごい
中塚さんにラボのノウハウを教えてもらい改めて溶液づくりに挑戦!!
3人は中塚さんに教えてもらったノウハウを参考にそれぞれにゼラチン溶液を作製しました。
じゃあ私は15wt%ゼラチン水溶液にPEOを3:7で混ぜよう!
酢酸だったらゼラチンの濃度を高めても上手くいくかも?
30wt%ゼラチン酢酸溶液にPVAを5:5で混ぜてみようかな!
私は全部入れてみる!30wt%ゼラチン酢酸水溶液にPVAとPEOを5:2.5:2.5で混ぜてみる♪
- 高:15wt%ゼラチン水溶液:PEO 3:7
- 正垣:30wt%ゼラチン酢酸溶液:PVA 5:5
- 王:30wt%ゼラチン酢酸水溶液:PVA:PEO 5:2.5:2.5
これらの溶液を一晩寝かせることにしました。
一晩寝かせたゼラチンの溶液を確認した結果
それぞれのゼラチン溶液がどうなっていたかというと・・・
- 高:15wt%ゼラチン水溶液:PEO 3:7
⇒固まってしまった。
- 正垣:30wt%ゼラチン酢酸溶液:PVA 5:5
⇒固まってしまった。
- 王:30wt%ゼラチン酢酸水溶液:PVA:PEO 5:2.5:2.5
⇒固まっていなかった。
なんと中塚さんのアドバイスを聞いて溶液を作ったにも関わらず、3人中2人の溶液がまたもや固まってしまいました。
そこで溶液が固まってしまった2人は再度中塚さんにHELPをお願いすることにしました。その結果、下記のようにアドバイスもらいました。
- 高:15wt%ゼラチン水溶液:PEO 3:7
⇒加熱して温かいうちに紡糸すれば上手くいくかも。
- 正垣:30wt%ゼラチン酢酸溶液:PVA 5:5
⇒濃度を30wt%から20wt%に下げてみる。
そして3人は中塚さんにアドバイスをもらって無事にゼラチンの溶液を作製することに成功しました。
実際にNANONを使ってゼラチン溶液を紡糸実験
今回は短時間の紡糸だし、少量の溶液でも無駄なく紡糸できるチューブレススピナレットを使ってこのパラメーターで紡糸をスタートさせてみましょう!
・電圧15~20kV
・FR 1ml/h
・紡糸距離 150㎜
・針の太さ 27G
固まらせずに作製することができたゼラチン溶液をチューブレススピナレットを使って紡糸実験スタート!
15wt%ゼラチン水溶液:PEOの紡糸結果
\ 15wt%ゼラチン水溶液:PEO 3:7 /
- 電圧12~26kVの範囲で紡糸ができる
- 11kVまで下げると液滴が垂れる
- 27kVまで上げるとジェットが出てこない
10分くらいで冷えて固まって紡糸が止まるかと思ったけど、30分近く紡糸できました!!
20wt%ゼラチン酢酸溶液:PVAの繊維径
- 18kVで紡糸:398.1615nm
- 25kVで紡糸:462.82nm
電圧を上げたほうが均一な繊維が紡糸できました。
固まってしまっても加熱をすることで有機溶剤を使わずに紡糸できたのでゼラチンの医療美容分野における用途の幅が広がりそうです!
20wt%ゼラチン酢酸溶液:PVAの紡糸結果
\ 20wt%ゼラチン酢酸溶液:PVA /
- 電圧15kV~30kVの範囲で紡糸ができる
- 10kVまで下げると液滴が垂れる
- 15kVでスタートし20kVまで上げていくとジェットが安定しなかった。
一回液滴が出るまで電圧を下げて再び電圧を上げると、15kVあたりからジェットが途切れなくなり、23kVでジェットが安定しました。その後30kVまで紡糸ができるのを確認できました。
20wt%ゼラチン酢酸溶液:PVAの繊維径
- 紡糸円の端:111.3563nm
- 紡糸円の中央:100.3597nm
紡糸円中央はビーズが多いのと、 他2人のナノファイバーに比べて繊維径が細く仕上がりました!
紡糸円中央は目視でも分かるくらい色が濃く、ウェットなので、一点紡糸ではなく横移動させながら紡糸すれば改善されるかもしれませんね。
30wt%ゼラチン酢酸水溶液:PVA:PEOの紡糸結果
\ 30wt%ゼラチン酢酸水溶液:PVA:PEO/
- 電圧12~30kVまで紡糸できる
- 11kVまで下げると液滴が垂れる
18kV~25kVの範囲で紡糸したファイバーと25kV~30kVの範囲で紡糸したファイバーでは光沢感が違って見える気がする。繊維が変化したのかも!
30wt%ゼラチン酢酸水溶液:PVA:PEOの繊維径
- 12kVで紡糸:610.75nm
- 25~30kVで紡糸:375.516nm
他の溶液で紡糸したものに比べて繊維径が太く仕上がりました!電圧が高いと繊維が細くなったのですが、繊維が均一でなくなりました。電圧が低いと繊維径が太く、均一になりました。
ゼラチン溶液を紡糸してナノファイバーをうまく作製するためには
今回の『HELP』のテーマ【ゼラチンでナノファイバーを作製】ということでしたがいかがでしたでしょうか。
濃度15wt%~30wt%のゼラチンを3人のメンバーがそれぞれちがったアプローチで紡糸に成功しました。
固まりやすいゼラチンをうまく紡糸するためにわかったこと
- 溶液が固まってしまったら加熱してみる
- PEOやPVAなど紡糸しやすい材料を混ぜる
- ゼラチンの濃度を下げる
教えて、先生!HELP!
ゼラチンを紡糸しているとジェットが安定しているようでも途中で液滴が垂れることがあった。なんでかな。
ゼラチン単体で紡糸する方法ってあるのかな。
上手く紡糸するにはどうすればいいでしょうか。
もしアドバイス等があれば教えてください。HELP!